　「やはり自分を見失っておったところがあるのかもしれません」－。1日に記者会見した石破茂首相は、商品券配布問題をこう省みた。内閣支持率の急落を招き、「おわび」「猛省」と謝罪や反省を繰り返した。綱渡りでたどり着いた政権発足半年。現時点での衆院解散や連立の組み替えを否定したことで、少数与党は続き政権基盤も弱いままだ。打ち出した政策は生煮えかつ小粒にとどまり、首相が強調する「楽しい日本」の絵図はまだ見えない。　【写真】自民党総裁選の投開票を前に、決起集会でカツカレーを口にする石破茂氏　冒頭で自民党衆院1期生への商品券配布問題について謝罪した。首相は「深く反省を致す」「真摯（しんし）に謙虚に受け止める」と神妙な表情で語った。3月中旬の問題発覚以降、予算の審議過程でも「十数回頭を下げた」（自民国対幹部）。国民の厳しい視線を踏まえ「謝罪行脚」を続けざるを得ない苦しさが浮かぶ。　2025年度予算は参院で修正され、衆院の同意を得て成立するという現行憲法下で初の事態。首相は「ある意味歴史的。熟議の国会の成果である」と胸を張って見せたが、強がりなのは否めない。課題だった官邸と自民の連携を深めるために、官房副長官と自民衆参幹部との会議を導入した。これで後半国会を乗り切れるかは見通せない。　会見について首相周辺は「未来について語る」と“予告”。実際は約30分かけて予算で実現する施策を紹介しただけだ。関心が高い物価高対策に目新しさはなく、最低賃金の引き上げ策も「5月までにまとめる」と踏み込まなかった。　米国による輸入自動車への25％の追加関税発動が迫る。発動されれば全国約千カ所に相談窓口を設置すると表明した首相は「除外を強く求めていく」と強調し、トランプ氏との直接交渉にも意欲を見せた。ただ、政権内部では悲観的な空気が漂う。「各国一律に関税が課される中で、日本だけ例外を勝ち取るのは難しい」　「ペーパーを読まず、自らの言葉を語る」（周辺）と評される首相。この日は手元の資料に目線を落とす場面が多く、政権発足半年にも自ら触れずに終わった。「ただ目まぐるしかった」（政府高官）。これは首相の本音でもあるだろう。　13日には大阪・関西万博が開幕する。公式キャラクターのぬいぐるみをわざわざ持ち出してアピールした首相。万博に合わせ「首脳会談をいくつもやる」（周辺）と前のめりという。自らの「失点」を挽回しようと局面打開を狙う。　（古川大二、大坪拓也）

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